心 ときめくままに……

花の四阿 写真館

【短編】つめ草の約束


草原を吹き渡る風が、花の梢を揺らし私の髪をも揺らす。
麗らかな春の午後。

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Photo by shima


子供の頃よく遊んだ公園に、黎翔さんと久しぶりに来た。
白詰草の花の絨毯に寝転ぶと、なんだか子供になった気分。
私は春の日差しを浴びて、そのまま思いっきり背伸びをしてみた。
空高く、ひばりが空を舞う。
麗らかな日差しと清々しい草葉の香りが、気持ちいい。
なんだか、ちょっぴり懐かしかった。

「……夕鈴」

名前を呼ばれた。この声は黎翔さんの声。

「なんだか懐かしいな。よくこの公園で遊んだよね」

あなたも、子供の頃を思い出しているの?
なんだか嬉しくて、隣に寝転ぶ黎翔さんの手をぎゅっと握り締めた。

……覚えてるわ。
幼い頃に、ここでたくさん遊んだよね。
“黎翔お兄ちゃん”そう呼んでいた頃にしたあなたとの約束も……忘れてない。

もうすぐ約束は果たされる。


「…黎翔お兄ちゃん」

懐かしい呼び名は、春風に優しく溶けた。
隣で黎翔さんが、笑った気配がした。

*****

「夕鈴ちゃん、ソレどうしたの?
誰に貰ったの?」

少し不機嫌そうなお兄ちゃんの声に、私はハッとして振り向いた。
ちょっと年上の私の幼なじみは、綺麗で賢くて優しくて、めったに声を荒げたりしない人だから……
お兄ちゃんの視線の先は、私の胸にかけられた白詰草のネックレスみたい。
でも、どうして不機嫌なのかしら?

私は、丁寧に編まれた短い一本を手に取りお兄ちゃんに見せた。

「コレは、青慎がくれたの♪ お姉ちゃんにって……」

そしてバラバラになりそうなほど、雑に編まれたもう一本を手にした。

「こっちは几鍔(きがく)のバカが、やるよって投げてよこしたの。お花が可哀想だから、つけてあげてるの」

ちょっと膨れて、私は幼馴染が作った花飾りから手を離した。
さっきの会話を思い出して私は、またムカっと腹がたってくる……なかなか怒りが鎮まらない。
もう一人の幼なじみである几鍔は、ホント私を困らせることばかりなんだもん。

「弟くんと几鍔くんか……」

ちょっと複雑そうな笑みを浮かべて、
私を見つめるお兄ちゃん。

「綺麗だね。」

そう言って花飾りを褒めてくれた。
いつもの優しいお兄ちゃんに戻って、私はホッと安心した。

「僕も夕鈴ちゃんに贈りたいな?
受け取ってくれる?」

大好きなお兄ちゃんも、私に花飾りをくれるの?
私は驚いて、目を丸くして顔を赤らめた。

「夕鈴ちゃんに、僕が花冠を作ってあげる!」
「うん!欲しい!」
「じゃあ……お花を集めるのを手伝ってくれる?」
「うん!いっぱい綺麗なお花を集めてくるね」

駆け出した私は、白詰草を摘みだした。
……大好きな黎翔お兄ちゃんの為に。

「お兄ちゃん。コレくらいで間に合う?」
「ありがとう!たくさん集めて来てくれたんだね。まにあうと思うよ!」

花を選別して、痛んだ花弁を丁寧に取り除いていたお兄ちゃんは、手を休めて私を誉めてくれた。
大きくて優しい手が、私の頭を撫でてくれる。

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Photo by Romixey


“黎翔お兄ちゃん大好き”

恥ずかしいから、声に出して言わないけど……きっとバレバレなんだろうな。
幼稚園での親友である明玉には、夕鈴はすぐに顔に出るから隠しごとはできないタイプって、言われてるし。

私は照れ隠しで、顔を赤らめてエヘヘ…と変な笑いで誤魔化した。
それでも、お兄ちゃんの手はありがとうって何度も頭を撫でてくれた。

*****
黎翔お兄ちゃんの手で、瞬く間に編まれてゆくシロツメクサの花鎖。
私は、魔法みたいにあっという間に出来ていく花冠をお兄ちゃんの隣で、只々見つめていた。
選別した綺麗な白詰草の花に、白いスミレの小束を編み込んで、雪のように真っ白な花冠が出来た。
青慎や几鍔がくれたのとは、まったく違う手の込んだ素敵な作りに、私は目を輝かせた。

「夕鈴ちゃん、出来たよっ!」
「わあっ!すごいっ凄い。黎翔お兄ちゃん、素敵~~」

黎翔お兄ちゃんは、出来たばかりの花冠を、私の頭にチョコンと乗せてくれた。

「お兄ちゃん、ありがとう!」

まるで、花嫁さんが被るような素敵な花冠に、私は嬉しくて歓声をあげた。
白く輝く花冠は、とても綺麗で…
嬉しそうな黎翔お兄ちゃんの笑顔が眩しくて……

私は貰ったばかりの花冠を、今度はお兄ちゃんに被せてみたくなった。
なんだか自分より、お兄ちゃんの方が似合う気がして
花冠を頭に載せた黎翔お兄ちゃんを見たくなった。

「黎翔お兄ちゃん、お嫁さんみたい。
私より似合う……ステキ!」

そんな私の突然の行動に、目を丸くして驚いたお兄ちゃん。

「僕は男の子だから、お嫁さんにはならないよ!
お嫁さんは、夕鈴ちゃんだよ!」

苦笑して、もう一度私に花冠を被せ直してくれた。

「あんまり可愛いから、ホントにお嫁さんにしちゃおうかな~~」
「大きくなったら、僕のお嫁さんになってくれる?」

子供心に、冗談でも嬉しくなった。

「うん、いーよ!
私、大きくなったら黎翔お兄ちゃんのお嫁さんになる!」
「じゃあ……約束しよっか?」
「約束?」
「夕鈴ちゃん。左手だして」
「?」

私の左手の薬指に、綺麗なシロツメクサの指輪をお兄ちゃんは作ってくれた。
そのまま引き寄せられて、お嫁さんみたいなkissをした。

触れ合うだけのkissは、幼心にもドキドキが止まらなくて……
私は、真っ赤になりながら、お兄ちゃんを見詰めていた。

「これで夕鈴ちゃんは、もう僕のお嫁さんだからね」
私は、コクコクとうなずくのが、精一杯だった。

幼き日の淡い初恋。
私と黎翔さんだけの秘密の約束。


*****


「夕鈴?」

急に、空が翳った気がして、私は目を開けた。
目の前には、青空を背にした黎翔さんが、私の顔を覗き込んでいて……
その距離の近さに私は、びっくりした。
綺麗な紅い瞳に見つめられて動けない。
そのまま…瞳に魅入られたように見つめてた。
距離だけが縮んでゆく。

幼い頃とは違う深くて情熱的な恋人たちのKiss。

「ねえ、夕鈴。白詰草の花言葉を知ってる?」
「え!?……知らない。」
「じゃあ、教えてあげる」

――白詰草の花冠は、「私のものになって」という意味があるんだ。
君は、無意識に僕にプロポーズしたんだよ、夕鈴。

耳元で囁かれた言葉に恥ずかしさで、消え入りそうになった。
――そんなの知らない。

真っ赤になった私に、黎翔さんは再びkissをしてきた。
「もう、可愛いなぁ、夕鈴は……」
「黎翔さんの意地悪……」


もうすぐ、私はあの日と同じ気持ちのまま……
幸せな花嫁としてあなたの本物のお嫁さんになるの。

*****

白いスミレの花言葉は、あどけない恋。
二人の幼い恋は成就する。

つめ草の約束は果たされる。



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  • 【短編】つめ草の約束
  • 2015年10月01日 (木)
  • 16時44分30秒
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